エクセルやPDFその他どんなファイルにでも押されているハンコ。
押印というか、実際にはハンコの画像を置くだけのものですが、それには効力があるのかどうか。
多くの事業者は明確な答えを持っていません。
じつはこのことは国のウェブサイトで明記されており、そこに答えがあります。
押印に関するQ&A-経済産業省
https://www.meti.go.jp/covid-19/ouin_qa.html
これは、内閣府、法務省、経済産業省の連名で、コロナ真っただ中に出されたものです。
この説明では契約書の話になっていますが、「誰かと何かを約束する」という点では、たとえば見積書でも同じですので、契約書を見積書に置き換えていただいても、おおむね差し支えはありません。
この種の文章は難しくて読みづらいのが難点ですので、当社で分かりやすい表現にしました。
下記をご覧ください。
Q1.法律的に、契約書にハンコを押さなくてもいいんですか?
・民間の企業同士の契約は、その契約を行う当事者(自社と顧客)の「契約する!」という意思によってなされるものです。そのため、当事者間で別の取り決めがない限りは、書面(契約であれば契約書)の作成やその書面への押印は絶対に必要なものではありません。
・つまり、当事者間で別の取り決めがない限りは(しつこい笑)、ハンコを押さなくても、契約の効力に影響がありません。
Q2.法律ではどんな風に解釈されているのですか?
・民事裁判では、私文書(私人、つまり公務員以外の人が作った文書)を証拠とするためには、その私文書を作った人がマジでホントにそれを作った人であると裁判相手が認めるか、または、それを証明しなければいけません。
・法律上、契約書といった私文書に押印があれば、明らかに「お前作ってないだろ!」とならない限り、押印した人がその文書を作ったことになります(民事訴訟法第228条第4項参照)。
・これは、押印があれば、明らかに「お前が作ってないだろ!」(しつこい笑)ということがない限り、裁判においても、「自分が文書を作りました!」と主張できることを意味します。いちいち裁判において、こうこうこうやって自分が作ったんですよーと証明しなくて済むのです。
・ただし、これは、「自分が作りました!」という事実を証明しなくていいだけの話であり、そもそも文書の中身にウソ偽りがないことまで証明するものではありません。先ほど出てきた民事訴訟法第228条第4項も、押印にそのようなパワーを授けていないのです。
・文書に押印があるかないかにかかわらず、文書を作った人を知っているのに、又はちょっと調べれば分かるのに、「お前が作ったんじゃないだろ!」と民事訴訟でいちゃもんを付けた場合には、過料(刑罰とは違って前科にはなりません。)を課されます(民事訴訟法第230条第1項参照)。
Q3.本人による押印がなければ、文書の真正な成立が証明できないのですか?
・押印があれば明らかに「お前が作ってないだろ!」とならない限り、押印した人がその文書を作ったことになります(民事訴訟法第228条第4項参照)。
・そもそも、相手がいちゃもんを付けてこない限り、文書を作った人に偽りがあるのかどうか問題になりません。また、相手がいちゃもんを付けてきても、押印のみで誰が文書を作ったか判断されるわけではなく、誰が作ったかを明らかにする資料などが他にあれば、そのような資料も考慮に入れて裁判官は判決を下します。逆に、押印がなかったとしても、誰が作ったかを明らかにする資料のみでも証拠として戦えるのです。
・確かに押印によって自分が文書を作ったことを証明する手間が省けますが、裁判の相手方がより信頼できる証拠で、「お前が作ったじゃないだろ!」と言ってきた場合には、裁判で負ける可能性があり、押印が万能であるとは言えないのです。
・したがって、押印があれば安心!とは言い切れません。そのため、テレワークを推進するのであれば、押印万能説はいったん脇に置き、邪魔くさい押印はなくし、「重要な文書だからハンコが必要」と決めつけてきた場合であっても、押印以外の方法はないかな?と考えてみることが大切です。
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